ときどき文化

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日本画をモノマネする

神戸アートビレッジセンターにて、ワークショップ『日本画をモノマネする』に参加しました。(2018年12月15日)
ミュージアムを活用した教育を考えるミュージアムエデュケーション研究会によるプログラムの一つです。

「日本画をモノマネする」ーミュージアムエデュケーション研究会2018 みんなの学美場 | 神戸アートビレッジセンター

それにしても日本画の“モノマネ”とは、どんな内容なのでしょうか。

講師は日本画家であり、東洋絵画の修理技術者でもある山下和也さん。
模写ではなく、あえて“モノマネ”としたことについて「模写の場合は正確さが大切ですが、モノマネでは(タレントのコロッケさんを例に)相手をよく観察して、特徴や本質をとらえて表現することが大切。今日は、絵の印象を絵で表現するモノマネに挑戦してみてほしい」とのこと。
画材は、和紙、墨汁、パステル、クレヨン、アクリル絵の具、色鉛筆など。和紙と墨汁以外は日本画で使うものではないと思いますが、そこはモノマネ。ふだん絵を描いていなくても扱いやすく、マネに専念できそうです。

お手本として用意された日本画は下の3点。

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自分が好きだな、と思う絵を選ぶのが良いですよ、と言われ、中央の水墨画を選びました。奥山の水辺の風景ですが、ボワーンと、ほんの少ししか描かれていないのに、空間の奥行きや広がりが感じられます。

絵だけのモノマネでもよいし、掛け軸全体(表装)をマネしてもいいですよ、とのこと。ぜひ掛け軸の形にしたいけど、制作そのものに使えるのは1時間半。とても時間内には完成できそうにない…と先生に相談したところ、「表装の部分は白紙でもよいのでは」というご意見。
たとえ白紙でも、掛け軸の形をつくることで、作品の魅力である、空間の広がりや空気感を表現できるかもしれない、とアドバイスをいただきました。

さっそくお手本の掛け軸を採寸させてもらい、配付された和紙を切って貼って‥と、この辺りは工作です。どんどん形になっていくのが楽しい!

掛け軸のパーツをおおむね作ったところで、絵にとりかかりました。が、まったく思ったように描けず、よくわからない抽象画が完成。
まぁ、ふだん筆で何かを描くことなどないし‥仕方ありません。最少限の線で空間の広がりや奥行きを表現しているお手本は、やはり達人の技なのだな‥と思った次第です。

(とりあえず)完成! 壁に掛けて展示します。

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掛け軸の体裁だけはほぼ手本通りに模造して、意外に絵のまずさが気にならなくなりました。 

他の方の作品は文字通り十人十色で、波や光に着目して表現したものあり、年数を経て退色した紙そのものの色を再現したものもあり。
注目する点も表現のしかたも見事に全員違い、このあたりは模写ではなくモノマネならではの面白さと思います。

ひととおり鑑賞後、自作についてプレゼンテーションをしていきます。お手本の絵にどんな印象を受けて、どのように表現したいと考えたか。使った画材や制作プロセスなどを順に発表して先生にいいところを誉めていただきながら、良い気分で終了しました。


今回モノマネして感じたのは、絵が少々残念な出来でも、型(掛け軸の形)をかっちり作ることで、それなりに見える・見せる形になっているということ。過去の蓄積や洗練を経て完成された、型の力を感じました。

見る側の頭の中にもものを見る型が刷り込まれていて、思い込みで見ている面があるということかもしれません。

モノマネ掛け軸も完成し、達成感のあった一日。準備も画材もたくさん必要な今回のプログラム、なんと無料で受講させていただきました。
講師の山下先生、スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。