ときどき文化

 美術、音楽、ワークショップの感想など

踊る美術鑑賞

兵庫県立美術館にて、↓ こちら  の活動に参加してきました。

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内容は題名の通り。美術館でダンスをするのです。

こりゃ面白そうと、いそいそ出かけてきました。


・・・

作品をみて感じたことを体で表現することで、美術品の新しい見方や発見につなげよう、というこのプログラム。
ダンサーの方が講師となり、まずは屋外でウォーミングアップです。

てっきり美術館の中で行うのかと思っていましたが、荷物を置くなり外に出て準備運動をしました。屋外エリアにマットを敷いて寝転がり、手足で空に絵を描くなど、ウォーミングアップのしかたも美術館らしい。美術館の床でごろごろ転がるなど、人生初の体験です。

体も気分もほぐれたところで館内に戻り、作品を鑑賞。兵庫県立美術館が所蔵する7つの作品が対象です。

配付された冊子からご紹介すると‥

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木版画に、風景画や抽象画、

 

 

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立体作品や、足で描かれた作品もあり。合計7点あります。

学芸員の方の案内で一つ一つの作品を鑑賞した後、作品を自由に観てまわり、どの作品をどんなふうに表現するか考えます。

この日の参加者は10数名。何人かのグループで表現するのかと思っていましたが、一人一作品について表現しましょう、とのこと。


私は一つの作品に絞り切れず、下の二つをセットにさせてもらいました。

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ふだんの自分なら、風景や人物など、何を現わしているのかわかりやすい絵には見入る一方、これらの抽象的な作品は

(これは‥ 赤い丸やな)

 

(こっちは‥ 白い線やな)

 

(‥作者は、いったい何を表現したいんやろ)

 

(‥‥わからんな‥)

 


‥という感じで、首をひねったまま通り過ぎる作品です。
  

ところが‥

体の動きで表現することを前提に、「これはどんな動きかな」と、作品を観てみたところ、

赤い丸からは、

なぜかガニ股で激しく飛び跳ねながら、奇声を上げる人の姿が

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  (当日のメモ書き)

 

白い線からは、河原のようなところで、風に揺られるように前後にゆらゆら揺れる何かの生き物の姿が

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思い浮かべられ、

いったいなぜそのような動きになるのか自分でもさっぱりわかりませんでしたが、自分にとってはその動き以外にはないように思われ、そのイメージの通りに動いてみました。(奇声を上げるのは控えました)

ゆらゆら揺れる→飛び跳ねる→ゆらゆら→また跳ねる という、サンドイッチ構成です。

 

踊りを発表した場所は、海に面した小さな野外舞台です。

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このように可愛いサイズのコロッセオ(円形舞台)があり、ここで順番に披露しました。

 

ちなみに私が選んだ赤い丸と白い線は他の参加者の方にも人気があり、十数名のうち、半数位の方がこの二作品のうちのいずれかを選んでいました。

一見単純な、でも何を現わしているのかははっきりしない絵のほうが、イメージを自由に広げやすいのかもしれません。

なお、今回参加した人のなかで、激しく跳ねまわるような動きをしていたのは私一人だけで(地面を転がっている人は居ましたが)、どちらかというと感覚のひだを繊細に、知的に表現されている方が多い印象でした。


最後は、ラッシュ・アワーの通勤人の群像を、参加者全員でやりましょうということになり、全員でぞろぞろと動きました。

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実に憂鬱そうな通勤人の群れです。わたしたちの踊りも、ハロウィンのゾンビのように見えたかもしれません。

・・・

踊っている自分がどのように見えているのか自分では分かりませんが、今回、希望者には動画撮影したものを美術館より送ってくださるとのこと。

撮影された自分の姿はまだ見ていませんが(見たくない気もしますが)、奇声をあげて跳ねまわるというのはかなり原始的というか、類人猿、たとえば雄たけびを上げるゴリラなどに近いイメージです。

その昔、エリマキトカゲが砂漠を疾走するテレビCMがありましたが、そのイメージにも近い。


1984 三菱ミラージュ「エリマキトカゲ」CM CDSOL-1195 Track44


見れば見るほど、自分の動きはエリマキトカゲに似ていた気がします。


作品の赤い色からは、何か強烈な生のエネルギーを感じたのかもしれません。社会の規範のなかで生活する中で、私自身の内部に抑圧されていたものが噴出したとも言えます。
理屈は後から考えたことですが、一度自分の体を通すことで、思いがけないものが出てきたというところが面白い。身体表現の好きな私にとってはツボにはまりまくる体験でした。

それで、「美術の新しい見方や発見につながったのか」って?

ええ、つながりました‥。つながりましたとも。
美術は本来、踊って鑑賞するものなのではないかと思うほどに。