ときどき文化

 美術、音楽、ワークショップの感想など

初訪問 福田美術館


昨年(2019年)の秋、京都の景勝地・嵐山に、こつ然と美術館が現れました。

渡月橋と嵐山を一望できる超一等地に、日本画の大家の作品がずらりと揃っていて、「えっ、いつの間に、誰がつくったんですか?」という唐突さです。(自分が知らなかっただけなんですが。)


その福田美術館で、「美人のすべて」という美人画の所蔵品展が開かれています。
(会期:2020年1月29日~3月8日)

f:id:pokorin3:20200214142053j:plain


最初の展示室(ギャラリー1)では、上村松園鏑木清方など、近代のコレクションを中心に紹介されています。

f:id:pokorin3:20200214122128j:plain

訪問した日は休日とあって、なかなかの人出でした。
上の写真の真ん中あたりに写っているのは上村松園の作品《姉妹之図》(1903年明治36年ごろ)です。

松園さんの作品を観る機会はこれまでも何度かありましたが、今回は初めて目にする絵ばかり。 

f:id:pokorin3:20200214122353j:plain
《浴後美人図》(1900年、明治33年ごろ)


目元の優しい、ふっくらとした顔。なんとも可愛いです。

《浴後美人図》、松園さんが25才ごろの作品です。




おもしろいなぁ~と思ったのが、下の《雨を聴く》という絵。 

f:id:pokorin3:20200215202239j:plain

(あら、降りだしたのかしら‥)


描かれているのは、着物姿の女性だけ。ところが《雨を聴く》という作品の名を頭において見ると、「ざぁーーっ」という雨音が聞こえてくるようなのですよ。湿度や室内の様子まで想像させて、見飽きません。



おさえた色合いの上の2点とは対照的に、いわゆるインスタ映えしそうなのが、山川秀峰という画家による《振袖物語》という作品です。

f:id:pokorin3:20200214122428j:plain
《振袖物語》(1919年、大正8年山川秀峰


写真の左側で流し目を使っている人は、顔だけ見ると女性のようにも見えますが、男性です。その彼を切なげに見つめたり、顔を覆って泣いたりしているのは、彼に恋焦がれる女性たち。

明暦の大火(1657年)にまつわる逸話をもとに100年前に描かれた絵ですが、ちょっと少女マンガ的というか、現代のイケメンと熱狂的なファンの女性たちとそう変わらないような気がします。


二つ目の展示室(ギャラリー2)では、江戸時代から近代にかけての美人画の変遷が紹介されています。


(文字通りの意味で)線の太い美人の姿も。

f:id:pokorin3:20200219202431j:plain
《立美人図》18世紀 長陽堂安知(ちょうようどう  あんち)作


友人は、「マツコ・デラックス」と命名していました。

見た目だけでなく、キャラ的にもマツコさんに似ているのではないかと思わせます。

 

 
時代が下り、明治末期の作品には現代的な美人も現れてきます。

f:id:pokorin3:20200214123539j:plain《花見》 西山翠嶂(にしやますいしょう)1909年(明治42年


手前の女性に注目すると、

f:id:pokorin3:20200214123620j:plain

二重まぶたのくっきりとした瞳。時代の変化を感じます。



ところでこの展覧会でも、写真撮影OKの作品が多くて驚きました。「えっ、いいんですか、本当に撮っても?」と、挙動不審になりそうです。
SNSの隆盛は、絵画鑑賞のルールを変えつつありますねぇ。

ただ実際に撮っている人はそれほど多くはなく、撮る人もみなさん鑑賞者ファーストで、快適に観覧できました。


・・・

最後に、美術館の建物と庭を少しご紹介します。
下は、一面ガラス張りの廊下から外を眺めたところ。

f:id:pokorin3:20200214123816j:plain


手前は庭、奥には嵐山と、ふもとを流れる川。右手に写っている建物の1階は、館内に併設されているカフェです。

借景が素晴らしすぎるカフェですから、時期によってはどれだけ長い行列ができることか、想像するのもおそろしい。ただ、今の季節(2月中)は落ち着いているのではないかと思います。
広い庭には「建物の広さを犠牲にしても、周りの風景と溶け合うようにしませんとナ。」という感じの、京都人の気概が感じられます。


2月の嵐山は他の季節に比べると人が少なく、ねらい目かもしれません。桜も紅葉もありませんが、梅は咲いております。



fukuda-art-museum.jp